被災した時に使える「雑損控除」をご存知でしょうか?
最近は北の方では雪災、南の方では水災、そして全国で地震と自然災害が猛威を振るっています。

そんな自然災害を個人の力で防ぐ事はなかなか難しいかもしれませんが、もし被災してしまった時に救済してもらえる所得控除の一つとして「雑損控除」があります。
「雑損控除」を簡単に説明すると
自身の資産について災害や盗難などによって損害を受けた場合に、その損失の一部を所得から差し引くことができる所得控除の一種。

ただこの制度を使う時に注意しなくてはいけない所があり、ちょっとした勘違いから大きな損をしてしまう事もあります。
そう言った事が無い様に詳しく確認していきましょう。
雑損控除とは?
まずは「雑損控除」の基本的な所を見ていきましょう。
雑損控除は自分の資産が災害や盗難などによって損害を受けた時に、その損失の一部を所得から差し引く事ができる控除です。
雑損控除が適用される場合の「損害の原因」は以下の内容に限定されています。
【雑損控除が適用される損害原因】
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
- 盗難
- 横領
最近増えてきている「詐欺」や「恐喝」による被害は雑則控除の適用外になります。
詐欺と盗難・横領は似ている様に感じますが詐欺は「騙されているものの被害者本人の意思で行われたもの」である事、盗難・横領は「被害者本人の知らない所で行われたもの」と言う違いがあります。
雑損控除の控除額は以下のいずれかの多い方が適用されます。
② (差引損失額のうち災害関連支出の金額)ー5万円
※「差引損失額」とは、損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額
「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額などです。
勘違いしがちな注意点とは?
この「雑損控除」が使えるのか?と考えた時に勘違いしてしまいがちなのが、上の赤字で記載している部分です。
国税庁のホームページでも同じ記載になっていますが、この様な記載になっていると「災害関連支出ってのは建物を壊した時、或いは除去した時しか対象にならないんだろうな」と勘違いする方が多いと思います。

建物を取り壊すとか除去するなんて言うと「相当大きな被害」にあったケースを想像してしまい「自分は対象外だろう」と思ってしまうんです。
でも実際には「一部が壊れてしまった場合の修繕費用」も対象になる為、ちょっとした修繕だったとしても対象になるケースが多々あるはずです。

具体的には受取れる保険金などがない場合は修繕費用が5万円を超える場合には雑損控除を受ける事ができるんです。
雑損控除の具体的な適用条件
次に「雑損控除」を適用する際の具体的な条件について見ていきましょう。
先程お伝えした様な大雨、台風、大雪、地震などで家の一部などが壊れてしまった場合は分かりやすい方だと思います。
他にも台風に備えて「土嚢」や「スコップ」などを購入した費用も対象になったり、家自体に浸水などしていなくても「塀が壊れた」とか「ガレージが水浸しになった」あとは「車が壊れた」なんてケースも対象になります。
盗難も対象になるんですが家に泥棒が入った時だけじゃなく、スリや置き引き等で被害を受けたケースも対象になります。

これも国税庁のホームページの様に「盗難」としか書かれていないと勘違いしてしまう事が多い所です。
他にも「雪下ろしの費用」「雪かきの為に購入したスコップ」「しろあり駆除」「すずめばち駆除」「クマ対策の費用」なども対象となります。

「そんなものまで対象になるの?」と思ったものがあれば損してしまっている可能性大ですよね。
申告し忘れても大丈夫?
「雑損控除」は年末調整などでは出来ないので必ず確定申告しなくてはいけません。
ですから会社員の方はうっかり忘れてしまう事もあるかもしれませんが、5年前まで遡って手続きできるので大丈夫です。

例えば2014年度以降の確定申告の場合は2020年の3月15日までの間に手続きをすれば「雑損控除」を適用する事ができます。
「雑損控除」は大きな損失だった場合にその年の所得金額から控除しきれない事もある為、申告する事を要件に翌年以後3年間の繰越控除が認められています。

つまり台風、地震など大きな災害にあった場合、その年だけでなく3年分の税金が安くなるって事ですね。
雑損控除の具体的な計算例
具体的な計算例があった方がイメージしやすいと思うのでこちらをご覧ください。
総所得金額等200万円
損害金額100万円
災害関連支出(やむを得ない支出)20万円
保険金30万円
この場合の計算は
差引損失額=100万円+20万円-30万円=90万円
雑損控除の控除額
① 90万円-200万円×10%=70万円
② 20万円-5万円=15万円
①の70万円と②の15万円を比較して多い方が適用できるので70万円が控除額となります。

雑損控除以外の所得控除が基礎控除だけだった場合、所得税・住民税で25万くらいのところ雑損控除70万円の適用を受ける事で10万円ほど税額が減る計算になります。
まとめ:今までの被災歴を確認しよう

今までに何か災害に被災した事がある方は「どのぐらいの被害だったか?」「雑損控除は適用できるのか?」を確認してみましょう。
税務署は税金を払わないと厳しい追及や調査をするし、場合によっては罰金の様な追徴を取られたりします。

でも税金を払いすぎていたりしても税務署の方から「払いすぎてますよ」なんて教えてくれる事はありません。
なんかズルいですよね。
自分の身は自分で守るしかないって事ですね。
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