亡くなった方の思いを伝える遺言書は相続の際の重要なポイントの一つですが、書く時に「遺留分」を考慮して書かなくてはいけません。
もし「遺留分」を考えずに遺言書を作ってしまうと、逆に遺言書が原因でトラブルが発生する可能性がとても高くなってしまいます。

実際に争族になっているケースを見るとこの「遺留分」が原因の場合が殆どです。

その様なトラブルに発展しない様に遺言書を書く前にシッカリと「遺留分」について理解しておきましょう。
遺産の分け方とは?
相続人が複数いる場合は「どの様に遺産を分けるのか?」を決めなくてはいけません。
この分け方にはルールがあるので、まずはその基本ルールを確認していきます。
ルールは大きく分けて遺言書が無い場合と遺言書がある場合に分かれるので、それぞれを見ていきましょう。
遺言書が無い場合
遺言書が無い場合は相続人全員で話し合ってどの様に遺産を分けるか決めていきます。
この話し合いの事を「遺産分割協議」と言いますが、話がまとまらなければ家庭裁判所で裁判によって分け方を決める事になります。

逆に相続人全員で話がまとまるなら法定相続分以外の分け方でも問題ありません。
遺言書がある場合
遺言書がある場合には原則、遺言書の通りに遺産を分ける事になります。
原則と言ったのは相続人全員の同意があれば遺言書の内容は変更する事が出来るからです。
こう言ったルールになっていないと例えば相続税を一切考慮していない遺言書が出てきてしまった時に、何百万・何千万と払う税金が増えてしまう事もあり得るからなんです。

って事は一人でも「私は遺言書通りに分けたい」と言う人がいた場合は、遺言書の内容が優先されるという事になります。
遺留分とは?
次に今回のテーマである「遺留分」についてですが、簡単に言うと相続人が主張できる「最低限の金額は相続できる権利」の事を言います。
「遺留分」は権利なので「遺留分まではもらう権利がある」と言う主張をするかしないかは本人次第で自由です。

では「遺留分」で保障されている金額はいくらなのかをこちらのモデル家族で見ていきましょう。
夫が無くなり法定相続人は妻と長男と長女の3人だとします。
法定相続分とは民法で定められた「遺産の分け方の目安」の事で、必ずこの通りに分けなくてはいけないという事ではありません。
そして「遺留分」は法定相続分の半分という事になります。
法定相続分 | 遺留分 | |
妻 | 1/2 | 1/4 |
長男 | 1/4 | 1/8 |
長女 | 1/4 | 1/8 |

ですからもし仮に「遺産のすべてを愛人に渡す」なんて遺言書が出てきても、妻や子供はそれぞれの「遺留分」までは返してもらう権利があるという事です。
この事を「遺留分の減殺請求」と言いますが遺留分が侵害されている事を知った日から1年間と言う有効期限があるので、早めに手続きをしないと請求ができなくなってしまいます。
不動産の評価に注意
相続財産に不動産が含まれているケースでは「遺留分」を侵害してしまう場合がよくあります。
例えば親が無くなり長男が親が住んでいた家を相続し、長女がそれ以外の遺産を全て相続したとします。

遺産の中で不動産の占める割合が多い場合は簡単に長女の「遺留分」を侵害してしまう事になります。
そして不動産には3つの評価方法があり「どんな時にどの評価方法を使うのか?」を覚えておかなくてはいけません。
利害関係のない第三者間で成立する売買価格が実際の時価と考えられており、遺留分を計算する時はこの実際の時価を使う事になります。
相続税を計算する時に使われるのは相続税評価額でザックリ言うと実際の時価の約80%程の評価になります。
最後は固定資産税評価額で文字通り固定資産税を計算する時に使われ、実際の時価の約70%程の評価になります。

ですから相続税の計算をする上では大丈夫だった場合でも、実際の売買価格ベースで計算すると「遺留分」を侵害してしまうケースがあるという事なので注意が必要です。
あなたは遺留分のある人?ない人?
「遺留分」は相続人の権利とお伝えしましたが、実は相続人の中に「遺留分がある人」と「遺留分がない人」がいます。
そもそもの「遺留分」の趣旨は「亡くなった人の家族が今後の生活に困らない様にする為に、必要最低限の金額は相続できる様にする」と言う所にあります。

そう考えると例えば「兄弟姉妹」や「甥姪」は経済的に独立しているケースが多いですから、遺産相続ができなくても困らないですよね。
ですから子供も親もいない夫婦の場合、夫が亡くなると妻と兄弟が相続人になります。
この時「遺産はすべて妻に残す」と言う遺言書があれば兄弟は「財産をよこせ!」と言えなくなりますし、逆に遺言書がなければ相続人全員の同意がないと遺産を口座から引き出す事も難しくなります。

子供がいない夫婦はちゃんと備えておかないとですね。
まとめ:遺言書は慎重に
今回は遺言書を書く時に必ず考慮しなくてはいけない「遺留分」についてお伝えしました。

せっかく「想い」があって意思表示をするのであればトラブルを招かない様に万全の遺言書を書ける様にしたいですよね。

その方の「家族構成」や「財産の状況」で考慮しなくてはいけないポイントが一人ひとり全然違うのが難しい所なので専門家に相談する様にしましょう。
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